漫画アーティストの柳廣成さんは、十数年前までは地域性のないフィクション漫画を中心に創作活動をしてきました。近年の創作活動は、つねに特定の地域、政治、社会と密接な繋がりを持っています。例えば、香港の民主化デモに関する《被消失的香港》(消された香港)、台湾のウガンダ留学生の事件を取り上げた《報導者事件簿001》(リポーター事件簿001)、台湾の歴史を背景にジェンダー問題に切り込んだ《北港香爐人人插》(尻が軽い女)、クーデターに対するミャンマー市民の抵抗を描く《緬甸・最後一搏》(ミャンマー、最期の抵抗/共著)などがあります。
東アジアメディア研究センターは、柳廣成さんをお招きし、東アジアにおいて民主を希求するなかで生まれた価値観の連帯を訴えるアーティストの越境する実践から、東アジアという地域の「繋ぎ直し」のプロセスについて振り返ります。
日時:2023年10月30日(月)18:30〜20:00
場所:北海道大学学術交流会館小講堂
講師:柳廣成(ラウ・クォンシン/LAU KWONG SHING)
司会:許 仁碩(シュ ジェンシュオ)北海道大学メディア・コミュニケーション研究院
使用言語:日本語
~講師プロフィール~
柳廣成(ラウ・クォンシン)
香港で生まれ、幼少期を京都で過ごした。日本の漫画文化から影響を受けて漫画家への夢を膨らませた柳さんは、9歳のとき中国に渡るも、1年足らずで一家は香港に戻った。香港中文大学で芸術を専攻し、アーティストとして創作を続けた。鉛筆で描く作風は素朴であるが、強い感情変化を感じさせる緻密なペンタッチは、漫画を媒体として表現することの可能性を権力批判に仕向けた。
2019年に香港で民主化運動が激化すると、みずからもデモに参加。警察と衝突して目を負傷した女性の姿と共に、警察に立ち向かう市民たちを描いた(《被消失的香港》所収)。2020年に反体制的な言動を取り締まる香港国家安全維持法が成立。香港では漫画市場が衰退していたこともあり、台湾での活動をイメージしていた柳さんは、同法が成立すると移住を決行する。権力批判の矛先は、2021年2月にクーデターが発生したミャンマーの国家暴力へと向けられる(《緬甸・最後一搏》)。
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