2021年2月1日にミャンマーで国軍によるクーデターが発生してから1年半が経ちました。2020年総選挙で圧勝した国民民主連盟(NLD)が新政権を樹立するため国会を召集した日の早朝にクーデターを起こした国軍に対して、市民は平和的抵抗運動を展開しました。その後、国軍の数々の蛮行を受けて「国民防衛隊」を結成し、少数民族と連携して武装闘争を続けています。民主化を求める市民に対する国軍の武力弾圧によって多くの死者が発生し、人権団体「政治犯支援協会」によるとその数は2000人を超すといわれています。2022年7月には、国軍統制下の裁判所が民主派活動家らを処刑するなど、国軍の横暴も続いています。
現地の報道からは少数民族武装勢力に軍事訓練を受ける若者たちの様子も伝わってきます。抵抗勢力と国軍が衝突する国境地帯では、無抵抗の民間人を巻き込む無差別な攻撃が繰り返され、戦禍を逃れた難民の人道危機が差し迫っています。国軍は国内で情報統制を強め、市民たちの抗議活動を抑え込んだと主張していますが、こうした惨状は国際社会にほとんど伝えられていません。連日報道されるウクライナ情勢に埋もれて、ミャンマーの現状は置き去りにされているのではないでしょうか。
こうした状況のなかでも、必死に内部の情勢を国際社会に向けて発信しようとする動きも見受けられます。世界各地でミャンマーの人びとが現地の市民と連帯し、国軍への抵抗がまだ終わっていないことを訴えているのです。過去、韓国や台湾の独裁権力は国際社会の圧力に神経を尖らせていました。在外コリアンや在外台湾人が重要な役割を果たし、トランスナショナルな情報交換のネットワークが稼働したことで、国軍の残虐行為を海外に知らせたのです。
世界各地のミャンマーの人びとの国軍に抵抗する意志と現地市民の連帯を共有することが、国際政治の舞台における制裁以上に、国軍には圧力を、抵抗勢力には希望を与えるはずです。日本でも各地でミャンマーの人びとが母国の民主化、平和と自由を求める活動を展開しています。本市民講座では、日本各地でのこうしたさまざまな取り組みについて共有し、持続的な関心が東アジアの民主化を推し進めてきたことをとおして、ミャンマー情勢にコミットする意義について考えます。
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院附属東アジアメディア研究センター長 玄武岩
市民講座は全5回にわたり実施します。
第1回 8月24日(水)18:00-19:30 (対面&オンライン)
ナンミャケーカイン(京都精華大学特任准教授)「1988年と2021年のミャンマー民主化運動と日本のつながり」
第2回 9月11日(日)18:00-20:00 (対面&オンライン)保芦宏亮(ミャンマー料理研究家) 「カレーとクーデター」
第3回 10月27日 (木) 18:00-19:30 (対面&オンライン)ソーバラティン(NUG駐日代表・在日カレン民族連盟幹部)「NUGの活動と少数民族の状況」キンゼッヤミン(国際ミャンマー学者・専門家協会理事)「 クーデター後の海外に暮らすミャンマー人の活動」
第4回 11月16日(水) 18:00-19:30 (オンライン)「日本各地のミャンマー民主化運動」トゥン(Myanmar Youth Association Hokkaido代表)、キンヤダナソー(Shizu Youth Myanmar代表)、トウヤソウ(在沖縄ミャンマー人会事務局長)
第5回 12月4日(日) 18:00-19:30 (オンライン)「ミャンマーの抵抗運動への日本人の連帯」石川航(日本ミャンマーMIRAI創造会日本側代表)、藤田哲朗(ミャンマーの今を伝える会創設者)
場所:北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院メディア棟407会議室(対面の場合)
参加ご希望の方は、こちらのリンクから申請するか、もしくは[住所][氏名][電話番号][所属(あれば)]を明記の上、タイトルを[市民講座参加希望]としてceams5143@gmail.com宛にメールをお送りください。各回の開催当日までに、ご登録いただいたメールアドレス宛にZoomのURLもしくは開催場所についての情報をお送りします。
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