開催日時:2022年10月29日(土) 13時00分~国際シンポジウム: グローバルな物語としての「パチンコ」-「在日」の表象と植民地主義の記憶(2022年10月26日正午 申し込み締め切り)

開催日時:2022年10月29日(土) 13時00分~

国際シンポジウム グローバルな物語としての「パチンコ」−「在日」の表象と植民地主義の記憶

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【開催趣旨】
「歴史認識」が大衆文化として消費される歴史修正主義の時代を私たちは生きています。日本の戦争責任の問題解明を担ってきた専門家の研究やジャーナリストの映像作品に裏づけられる学知は、こうした言説空間ではあまり有効なファクトチェックとしての機能を果たせていません。それどころか、学知よりも情動的な主張を展開する歴史修正主義の組織的な動きは、「戦後50年」に向けて表明されることで一定の共感を引き出した「歴史認識」のコンセンサスを掘り崩しています。
学知と社会の間隙がますます乖離する時代に、「加害」と「被害」の対立的構図を超えて、東アジアでは、互いに共感できる歴史/物語をいかにして築きあげることができるのでしょうか。そのような意味において、在米コリアンのミンジン・リーの同名小説をドラマ化して2022年に配信を開始したApple TV+シリーズ「PACHINKO パチンコ」は「良質な物語」といえます。一方で、ディアスポラの普遍性に訴えるドラマ的効果が「在日」の単調な描写によって劇的になることは、国民国家とグローバル資本が生産する歴史叙述のあいだにずれが生じる歴史的リアリティへの問いを提起します。本シンポジウムでは、グローバルなメディア消費が普遍的となる状況に鑑みて、歴史的リアリティは誰に向けて、どのように構築されるのか、またそれらが消費され再生産されるスタイルに照準をあて、国内外の研究者がこれからの学知と社会とのあり方について議論します。

【開催日時・場所】
2022年10月29日(土)13:00−18:00(開場12:30)
東京大学大学院情報学環・福武ホール地下2階福武ラーニングシアター

【参加方法】
こちらのリンクをクリックし、参加申請フォームに必要事項を入力・送信してください。なお、参加費は無料です。

一般参加者はオンラインでの参加となります。お申込み頂いた方には、ご入力頂いたメールアドレス宛に開催日前日までにZOOMのIDとパスコードをお送りいたします。
※対面ならびにウェビナー参加の申し込みは、10月26日正午をもって締め切りました。

【シンポジウム演目&登壇者】
◎基調講演 「パチンコ」と在日コリアンの「社会資本」−歴史とフィクションのはざま
テッサ・モーリス・スズキ(オーストラリア国立大学)

◎座談会 ドラマ「パチンコ」から考えるグローバル・メディア時代の記憶と忘却
テッサ・モーリス・スズキ/鄭炳浩(漢陽大学)/姜信子(作家)

◎パネルディスカッション 「在日」からみたディアスポラと植民地主義
倉橋耕平(創価大学)/深沢潮(作家)/ハン・トンヒョン(日本映画大学)/伊地知紀子(大阪公立大学)/宮地忠彦(専修大学)

司会:玄武岩(北海道大学)/金敬黙(早稲田大学)/李美淑(東京大学)

【登壇者プロフィール】
テッサ・モーリス-スズキ (Tessa Morris-Suzuki)
オーストラリア研究協議会特別フェロー・オーストラリア国立大学教授。専門は歴史学、日本近代史。2013年に第24回福岡アジア文化賞学術研究賞を受賞した。民族や国家の境界を越え、新しい地域協力や市民社会のあり方を構想するグローバルな知識人としてアジアの人々の相互理解に多大な貢献を行っていると評価されている。著書に『辺境から眺める アイヌが経験する近代』(みすず書房、2010年)、『北朝鮮へのエクソダス 「帰国事業」の影をたどる』(朝日文庫、2011年)、『批判的想像力のために グローバル時代の日本』(平凡社ライブラリー、2013年)、『過去は死なない メディア・記憶・歴史』(岩波現代文庫、2014年)など多数。

鄭炳浩(チョン ビョンホ)
漢陽大学名誉教授。博士(人類学)。元韓国文化人類学会長。米国イリノイ大学で人類学の博士号を取得。専門は文化変動論、実践人類学。韓国の共同保育と共同体教育運動を導きながら、北朝鮮の子どもの飢餓救護活動、脱北青少年教育支援に関わる。共著にNorth Korea: Beyond Charismatic Politics, Rowman & Littlefield Publishers, 2012(鄭炳浩、権憲益著、趙慶喜訳『「劇場国家」北朝鮮─カリスマ権力はいかに世襲されたのか(仮)』近刊、法政大学出版局)がある。

姜信子(きょう のぶこ)
作家。東京大学法学部卒業。1986年『ごく普通の在日韓国人』(朝日新聞社)でノンフィクション朝日ジャーナル賞受賞。著書に『棄郷ノート』(作品社、熊本日日新聞文学賞受賞)、『追放の高麗人』(石風社、地方出版文化功労賞受賞)、『ノレ・ノスタルギーヤ』『ナミイ! ―八重山のおばあの歌物語』『イリオモテ』(岩波書店)、『生きとし生ける空白の物語』(港の人)、『声 千年先に届くほどに』(ぷねうま舎、鉄犬ヘテロトピア文学賞受賞)、『平成山椒太夫―あんじゅ、あんじゅ、さまよい安寿』(せりか書房) 、『はじまれ、ふたたび いのちの歌をめぐる旅』(新泉社)など多数。

倉橋耕平(くらはし こうへい)
関西大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。現在、創価大学文学部准教授。専門分野は社会学、メディア文化論、ジェンダー論。著書に『歴史修正主義とサブカルチャー 90年代保守言説のメディア文化』(青弓社、2018年)、共著に『ネット右翼とは何か』(青弓社、2019年)、『教養としての歴史問題』(東洋経済新報社、2020年)など。

宮地忠彦(みやち ただひこ)
立教大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。博士(政治学)。現在、専修大学法学部准教授。専門分野は近代日本の政治社会史、現代日本政治論。著書・論文に『震災と治安秩序構想』(クレイン、2012年)、論文「大震災下の自警団をめぐる議論のねじれ-警察と「社会の発見」派知識人」松田宏一郎・五百旗頭薫編『自由主義の政治家と政治思想』(中央公論新社、2014年)、論文「警察の「大正民主主義」再考-「立憲法治ノ警察」と「皇国警察」の間-」『日本史研究』666号、2018年など。

伊地知紀子(いぢち のりこ)
大阪市立大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学、博士(文学)。大阪公立大学大学院文学研究科教員。朝鮮地域研究、生活世界の社会学、文化人類学。著書に、『消されたマッコリ。-朝鮮・家醸酒文化を今に受け継ぐ』(社会評論社、2015年)、『日本人学者が見た済州人の生―生活世界の創造と実践』(韓国語)(景仁文化社、2013年)、共編著『阪神都市圏の研究』(ナカニシヤ 出版、2022年)、『和解をめぐる市民運動の取り組み』(明石書店、2022年)、IJICHI, Noriko., Atsufum KATO, and Ryoko SAKURADA eds, 2015, Rethinking Representations of Asian Women: Changes, Continuity, and Everyday Life, New York: Palgrave.

深沢潮(ふかざわ うしお)
小説家。父は一世、母は二世の在日コリアンの両親より東京で生まれる。上智大学文学部社会学科卒業。会社勤務、日本語講師を経て、2013年新潮社より、在日コリアンの家族の喜怒哀楽が詰まった連作短編集『ハンサラン愛するひとびと』を刊行。(文庫で『縁を結うひと』に改題。2019年に韓国にて翻訳本刊行)。ほかの作品に、父親をモデルにした小説『海を抱いて月に眠る』(文春文庫)(2020年韓国にて翻訳本刊行)、沖縄の従軍慰安婦を描いた『翡翠色の海へうたう』(KADOKAWA)などがある。

ハン・トンヒョン(韓東賢)
日本映画大学映画学部准教授。専門は社会学、ネイション・エスニシティ論。主なフィールドは在日コリアンのことを中心に日本の多文化状況。著書に『チマ・チョゴリ制服の民族誌(エスノグラフィ)』(双風舎、2006年)、共著に『ポリティカル・コレクトネスからどこへ』(有斐閣、2022年)、『韓国映画・ドラマ──わたしたちのおしゃべりの記録 2014~2020』(駒草出版、2021年)、『平成史【完全版】』(河出書房新社、2019年)など。


主催:北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院東アジアメディア研究センター/早稲田大学アジア研究所/東京大学大学院情報学環李美淑研究室
後援:韓国国際交流財団